ベランダの木日記

ベランダで盆栽(とは言えない和風の鉢植え)などを育て始めて4年目の新人です

東のタカノと石の吉兵衛

2月22日。猫の日。久しぶりになーんの予定もない一日。ひとり散歩に繰り出すことにした。さて、どこに行こうか。そういえば、少し前に入ったカフェで飲んだ紅茶(ウバ)がえらく美味しくて感動して、どこの紅茶か尋ねるとティーハウスタカノというお店の紅茶とのことだったな。調べると、西のムジカ、東のタカノといわれるほどに有名な紅茶屋さんだそうだ。生まれは大阪の私、ムジカは行ったことがある。ならば、東のタカノへも行っておこうじゃないかということで、神保町へ繰り出すことにした。ひとり電車に乗ってお散歩なんて久しぶり!ワクワクワクワク!

 

開店と同時に一番乗りでタカノさんに入店。ミックスサンドのランチセットにババロアもつけた。こういうのを自分へのご褒美って巷のお姉様たちは言うんでないのー?ムフフフとほくそ笑んでいると、瞬く間に店内は満席に近い状態になった。一番乗りしてよかった。運ばれてきたミッスクサンドのボリュームにはびっくりしたけれど余裕で食べられた。そして、紅茶がめっっっちゃ美味しい!体中に染み渡る香りと味わい。ババロアもめっっっちゃ美味しい。お土産に茶葉を二種類買って、大満足で店を出た。

 

次に文房堂へ。可愛い雑貨を眺めていると、横で小さなラジオを眺めていたおじいさんの元へ、よく似た雰囲気のおじいさんが歩み寄り声をかけた。「Sさん、おまたせ」「Tさん、どうもどうも。これ見てよ。欲しくなっちゃうよ」と少し会話したのち店を出て行った。二人から醸し出される和やかな雰囲気がとても素敵。このあと二人はどこへ行くのだろう。それにしても、文房堂の雑貨コーナーで待ち合わせするおじいさん友達って最高だな。ああ、いいもの見た。

 

その次は神田古書センターへ。目的は動植物の古書を扱う鳥海書房。盆栽の本が少しあったので手に取って眺めていると、店主さんが「盆栽の本は奥の方にもあるよー」と誘ってくれた。「盆栽の本も昔のは内容が濃くておもしろいね」なんて話をしながら、上の方にあって私の身長では届かない本を下の棚に移してくれた。あれこれ眺めて「樹石 石と木と草の唯一の趣味誌(昭和45年3月発行)」という雑誌を買うことにした。だって、「探石-この限りない浪漫-」「小説形式による愛石の探求 石のある人生」、なんと魅惑的なタイトル!読みたすぎる!



できれば喫茶店に入って「樹石」を読みたかったが、時間切れにつき神保町を後にし、帰りの電車内で「石のある人生」を読んだ。『石の吉兵衛が「石も草も共に宇宙の申し子。物質も精神も共に活動。エネルギーこそ宇宙の大本」と悟り、例の如くふところから丸い石を取り出してじっと眺める。(つづく)』。と、そんな内容。なにこれ、想像の斜め上のそのまた上を行っている!面白すぎる!第一回から最終回まで読みたい。この小説、一体どう始まってどう終わるのー!?いや待って。想像の斜め上行くと思ったけれど、そうではないのかも。石のある人生を生きる人はどうしたって万物の繋がりとか宇宙のはじまりとかに想いを馳せることになってしまうのかも。石の吉兵衛のように。やっぱり石にはぎゅうぎゅうにロマンが詰まっているんだわ。石、やべえ。石、拾いてえ。とひとり盛り上がった。

 

樹石にはその他にも短歌や俳句の読者投稿コーナーなどもあって、当時の愛好家たちが石と木と草を存分に楽しんでいる様子が窺えてとても感動した。

 

ひとり神保町散歩は大成功だったな。久しぶりにブログを書いたけれど、「東のタカノと石の吉兵衛」というキャッチーなタイトルを思い付いて、書かずにはいられなかったことを最後に打ち明けてこの記事を終わろうと思う。